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健康経営

社員全員で考える「三ヶ月スローガン」~ 4年9ヶ月の継続から見える、組織の成長と企業文化

  • 作成日:2025.11.11
  • 更新日:2025.11.11

このたび、今期(2025年12月~2026年2月)の「三ヶ月スローガン」が決定し、朝礼で表彰を行いました。本日は、この取り組みについて、そしてそこから見える当社の企業文化について、お伝えしたいと思います。

三ヶ月スローガンとは? ~ 2021年2月から続く取り組み

当社では、2021年2月より、「三ヶ月スローガン」という取り組みを行ってきました。6月~8月、9月~11月、12月~2月、3月~5月の各三ヶ月ごとに、その期間のスローガンを社員全員で考え、提案してもらいます。そして、全員から寄せられた提案の中から、社長が「次の三ヶ月で、当社が最も大切にすべきことは何か」を見極め、スローガンを選定します。決定したスローガンは、会社各所に掲げられ、その三ヶ月間、全員で意識を共有しながら仕事に取り組みます。

社長の独断による選定 ~ リーダーシップと全員の想いの融合

ここで大切なのは、スローガンが「全員投票」ではなく、「社長による選定」だということです。これは、一見すると「上意下達」に見えるかもしれません。しかし、実際には、この仕組みに深い意味があります。

全員が「自由に、自分たちの考えを表現する」という開かれたプロセスがあり、その上で、社長がすべての提案を吟味し、「当社の経営理念に最も合致し、次の三ヶ月で全員が一丸となって取り組むべき価値観は何か」を判断する。つまり、「民主的な提案」と「リーダーシップのある判断」が、一つの仕組みの中で機能しているのです。社長が、全員の想いの中から、経営理念を読み取り、その理念を全員に返す。その過程で、会社の目指す方向性が、より一層明確になっていく。

全員参加の民主的な提案プロセス

このスローガンの素晴らしい点は、「すべての社員が、対等に参加する」提案機会があるということです。新入社員も、ベテラン社員も、管理職も、事務職も、製造職も、関係ありません。全員が、「この三ヶ月で大切にしたいこと」「会社の課題解決のために必要なこと」「組織全体への想い」を、スローガンという形で表現します。それぞれの社員が、自分たちの視点から、会社について考える。その考えの集約が、社長の前に並ぶ。

今期の受賞作品

本日朝礼で、今期(2025年12月~2026年2月)の選定作品を発表いたしました。結果は以下の通りです。

金賞:「明るい挨拶、最高のスタート!」 R・Nさん

シンプルながら、最も本質的なメッセージです。朝礼が始まる前、朝礼の最中、休み時間、帰る際……毎日の中で、私たちは何度も誰かに挨拶をします。その挨拶が「明るく」「前向き」「心からの」ものであれば、その日一日全体の雰囲気が大きく変わります。天気の良い朝日を浴びるのと同じように、明るい挨拶を受けた人は、自然と心が晴れ、「今日も頑張ろう」という気持ちになる。そして、その気持ちで臨んだ仕事は、必ず「最高のスタート」になる。

実は、このスローガンを考えてくださったR・Nさんは、当社の中でも随一の素敵な笑顔で知られています。誰に対しても、分け隔てなく、心からの挨拶をしてくださる方です。なかなかあんなに素敵な笑顔は、作ろうと思っても作れるものではありません。しかし、私自身も、R・Nさんの笑顔に一歩でも近づけるよう、毎日努力しています。そのような方の言葉だからこそ、「明るい挨拶、最高のスタート!」というスローガンが、より一層の説得力を持つのだと感じます。

銀賞:「今すぐやろう どうせやらなければならない事は」 H・Mさん

このスローガンは、私自身の心に最も「突き刺さった」ものです。「忙しい、忙しい」と言いながら、目の前のタスクを後回しにしてしまう自分。メールの返信も、企画の提出も、「あとでいいか」と先延ばしにしてしまう癖。このスローガンは、そのような自分の甘さを、端的に指摘してくれています。

「どうせやらなければならない事なら、今やってしまった方が楽じゃないか」。その論理的なシンプルさと、心理的な説得力に、思わず背筋が伸びる思いがしました。

銀賞:「安全・健康・協力の三位一体で前に進もう」 A・Yさん

これもまた、当社にとって最も本質的なテーマです。安全は作業現場での物理的な安全、そして心理的な安全性。健康は従業員一人ひとりの心身の健康。協力は困難に直面したとき、一丸となってそれを乗り切る力。この三つが揃わなければ、企業は持続可能ではありません。

いくら利益が出ていても、従業員が怪我をしたり、心身が病んだり、チームバラバラでは、本当の成功とは言えません。このスローガンは、我が社の経営哲学そのものを表現してくれています。「協力」する風土さえあれば、どんな困難も乗り切れる。そのことを改めて思い出させてくれる、素晴らしいメッセージです。

銀賞:「残業減らして収入増やそう」 F・Kさん

このスローガンの素晴らしさは、当社が長年追求してきた経営課題を、わずか10文字で完璧に表現していることです。当社では、ここ数年、働き方改革と健康経営に積極的に取り組んできました。5年ほど前は、月70~80時間の残業があった時期もありました。しかし、従業員の心身の健康を最優先に考え、また国の働き方改革の方針を取り入れ、徐々に残業時間を削減してきました。現在では、残業は最大1時間程度、毎週水曜日はノー残業デーと定めています。つまり、月の残業時間は最大16時間程度です。

しかし、ここで大きな課題が生じました。「残業が減るということは、給料が減るということ?」「そうなると、生活が大変になってしまう……」そのような不安や懸念が、従業員の心にあるかもしれない。その不安を払拭するためにはどうすればいいか?答えは、シンプルです。

「残業で稼ぐのではなく、生産性で稼ぐ」。つまり、一人ひとりの技術力、仲間との連携力、業務効率を年々向上させることで、同じ時間で、より多くの価値を生み出す。その結果、会社全体の売上や利益が増加し、その利益を、従業員の基本給に還元する。そうすることで、残業時間が減っても、年収は増加し続ける。

このサイクルを実現するためには、全員の協力が必要です。昨週できなかったことを、今週はできるようにする。一人一人が成長すれば、17人で会社として急成長する。年々、同じメンバーでできることが増える。その結果として、残業なしで、かつての年収を上回り続けることができる。何もしなくて年数が経てば給料が上がるわけではありません。自分の技術力、仲間との連携力を年々磨いて向上させることで、会社全体が成長して、利益が上がり、みんなの給料が上がる。このサイクルを長期的な目で見て、ぐるぐる回す。これが、当社の経営哲学です。

そして、F・Kさんは、その複雑な理論を、わずか10文字の「残業減らして収入増やそう」というスローガンで、見事に表現してくれました。素晴らしい。

拍手のすばらしさ

朝礼での表彰シーンを見ていて、改めて感じたことがあります。拍手とは、なんて素晴らしい表現方法なんだろう、ということです。拍手をしている側も幸せになるし、拍手をしてもらった側も幸せになる。相手の工夫や想いを認め、尊重し、その努力を讃える。言葉では「おめでとう」「ありがとう」と言うこともできますが、拍手という身体的な行為を通じて表現されたとき、その喜びや感謝は、より深く、より強く相手の心に届く気がします。

今朝、会社中に響き渡った拍手の音は、単なる「表彰式の演出」ではなく、「チーム全体が、一人ひとりの仲間を認め、讃える」という、当社の企業文化そのものだったのだと思います。

4年9ヶ月の継続から見える、組織の価値

このスローガンの取り組みが、2021年2月から2025年11月まで、ずっと続いている。そして、毎回必ず全員が、何かしらのスローガンを考えて提出してくれる。このことの価値を、改めて考えてみたいと思います。

当社は、すべてのスローガンをエクセルに記録しています。「Aさんについて」を見返してみると、随分考えが変わってきた。5年前のスローガンと、今のスローガンでは、見える景色が全く違う。ある社員は、かつて「個人の成長」を意識したスローガンを書いていたのが、最近は「チーム全体」を意識したものを書くようになった。別の社員は、「外部環境」を意識した内容から、「内部改善」へと、テーマが深化している。このデータは、単なる「スローガンの集約」ではなく、当社の全員の「成長の足跡」そのものです。僕にとって、このエクセルは、お金では買えない「宝物」です。

さらに重要なのは、この取り組みが生み出す「企業文化」です。社員全員が「会社の課題や目標について考える」という習慣が、体に染み込む。受け身で仕事をするのではなく、「自分たちの会社をどうしたいのか」「次の3ヶ月で大切にすべきことは何か」を、主体的に考える。その考えが、スローガンという形で可視化され、全員に共有される。その結果、会社と従業員の想いが一致し、チーム全体が同じ方向を向いて進んでいく。このような「一体感」は、外からお金を払って買うことはできません。

そして、このスローガンの取り組みが、4年9ヶ月も続いているという事実。新入社員が入れば、会社の伝統として受け継がれ、ベテラン社員は、その成長の記録として蓄積される。組織の中で、「当たり前のように」「自然に」、このような民主的で透明性の高い運営が行われている。このような企業文化は、一朝一夕では作れません。経営者が、少しずつ、丁寧に、積み重ねてきた結果なのです。

社長の選定プロセス ~ リーダーシップとしての判断

全員からの提案の中から、社長がスローガンを選定するプロセスこそが、リーダーシップの本質だと思います。全員の想いを受け取り、その中から「当社が今、最も大切にすべき価値観は何か」を見極める。そして、「これだ」と確信したスローガンを、堂々と掲げる。その判断が正しいか、間違っているか、それはいざ進み始めてから、初めてわかることかもしれません。しかし、その「判断の重さ」「責任を引き受ける姿勢」こそが、組織全体に信頼感と方向性を与えるのです。

同様の取り組みをご検討されている皆様へ

当社の「三ヶ月スローガン」取り組みについて、ご質問やご相談があれば、ぜひお問い合わせください。「社員全員で、会社の目標や課題について考える文化を作りたい」「従業員の主体性や参加意識を高めたい」「組織全体の一体感を高めたい」「経営理念を社員に浸透させたい」「リーダーとしての判断力を、組織に可視化させたい」このようなご希望がございましたら、当社の実践例が、少しでもお役に立つかもしれません。ホームページの「お問い合わせフォーム」からご連絡いただければ、幸いです。

最後に

金賞、銀賞に選ばれた皆さん、本当にありがとうございます。そして、全員から提案いただいたすべての社員の皆さんへ。皆さんが、真摯に考えてくれたスローガン、皆さんの想いの一つひとつが、当社の企業文化を作っています。次の三ヶ月も、「明るい挨拶、最高のスタート!」で、全員一丸となって前に進みましょう。

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